迷える仔羊はパンがお好き?
  〜聖☆おにいさん ドリー夢小説

     10



圧しに弱いイエス様が、
ついつい振り切り切れずにお付き合いが始まってしまった
さんという可愛らしいお弟子候補さんをお迎えしての長い1日は。
ペトロさん、アンデレさんのご協力まで仰いで
さあ掛かっていらっしゃいと段取りした
“ネトゲ聖人大作戦”が功を奏さなかったその上、

 “いつの間にそんな作戦名が…。”(そこかい)

天候の急変も含め、予定外のすったもんだも幾つか乱入したものだから。
終しまいには迎え撃つ側までが、
あたふたと浮足立っての無残にも翻弄される始末。
正しく てんやわんやの障害物走を、それでも何とか乗り越えて。
美味しい晩ご飯を 揃って“はうぅ〜”と満喫することで幕を下ろして、1日目終了。
今宵も駅前のまんが喫茶にオールナイト利用で泊まるというさんは、
夜食にお食べとブッダから持たされた、ラップにくるんだおむすびを手に。
ではまた明日と、まだ明るい内にそれは朗らかにアパートから去ってゆき。

 「…う〜ん。」

家業を蹴ってパン職人への道をゆくにしても、
ウチの掴みどころがないイエス師匠には辟易してもらおう、
我に返って おウチへ帰ってもらおうという主旨は、
これでなかなかに伝えるのは難しいようで。

 「気のせいか、好印象ばかり与えてないかなぁ。」
 「だってあんなに素直なお嬢さんだし…。」

そこはやはり、最聖人のお二人のやることだから、
小さき者をむやみに傷つけたくはないと、及び腰になるのも已なきこと。
どこででもいいから“それではいかん”という無茶振りが
結局は出来なんだイエスのみならず。
ブッダもブッダで、
梵天氏やマーラといった、相手が相手だからでもあったが、
ついのこととて
その身を盾にしてでもとの庇い立てをしてしまっていたほどであり。

 「…そうなんだよねぇ。」

いっそのこと、梵天氏にスカウトさせてもよかったかも知れぬ。
マーラに驚いたのを、ああいうものが憑いておるので弟子が取れぬと、
大ボラ話を膨らませるのも手だったかもしれない…が。

 「嘘はいけません、嘘は。」

 Q;パン職人じゃないのを伏せているのは、嘘ではないのでしょうか。

 「…そこは方便と言いますか。」

こらこら。(苦笑)
イエス様のお返事へ、もーりん同様の苦笑をしつつ、

 「ちゃんに見つかったパンは確かにイエスが“作った”ものだし、
  奇跡の力で転変させたという事実を明かせないことが最優先だからね。」

ブッダ様がそうと仰せの通り、
手品師ですと誤魔化すにしたって、
家の戸棚にああまで多くのパンを隠し持ってる言い訳にはならぬとばかり、
そもそもそれへ舞い上がったのが第一の敗因だから、であり。
いっそのこと、
イエス様がすっぱりと“私は弟子は取らぬ匠だ、出て行けっ”と言い切るとか、
ブッダ様が意地悪な姑よろしく、キッチンの使い方がなってませんと苛めるとか…

 「無理だよ。」
 「無理ですよ、そんなの。」

…だよねぇ。
ちゃんの姿が通りの向こうへと消えるまでを
アパート前で見送ってるようでは、今更だものねぇ。(う〜ん)
どちらからともなく ふうという吐息をついて、
2階の自宅までをゆっくりと引き返す。
まだ白々と明るいが、陽は落ちているし雨も降ったしで、
風はいくらか涼しくて、
少しは気持ちを落ち着けてもくれるよう。

 「でも、まさかこのまま パン屋さんになるつもりもないのでしょう?」
 「当たり前だよ。」

ですよねぇ。
ばら専門の花屋さんなら、元手はかからないから出来なかないけれど、
パンの方は、皿なり鉢なり、転変させる陶磁器が要りますし。

 「いや、そういう問題じゃあなくて。」

すすす、すいません。つい世知辛いことを。(まったくだ)
人ならぬ身でも出来ることと出来ないことはやはりあるようで。
それに、奇跡を起こせる神や仏だとて、
だからといっての無理強いはやはりよろしくないというのが
二人の揺るがぬ方針でもあって。
どこが問題かと言って、
梵天氏もちらりと言っていたように、
神通力で強引に記憶を書き換えるなんていう強引な力技を選んだとて、
人の記憶のメカニズムは神の奇跡以上に複雑緻密なので、
消したはず隠したはずでも編纂され直す恐れは大きいそうだし。

 「それに、何というものか。」
 「…うん。」

一生懸命なお嬢さんが、何とも稚く可愛いものだから
せっかく縁が出来たのに、
そんな格好で無下に振り払うというのは何とも気が引ける。

 「それこそ煩悩なんだろうか。」
 「いや、これは愛だよ、愛っ。」

古いCMのキャッチコピーみたいですが。(笑)
これはやはり、地味な作戦ではあるが、
彼女の側から“ついていけません”とか“考え直します”とか
言い出してもらえるように頑張る(?)しかないようで。

 「明日はどんなパンを焼いてくれるのかなぁ。」
 「ダメ出しをする隙があればいんだけど。」

今度こそ、考えの読めない師匠で通さないととブッダが口添えし、
それへ“う〜ん、気が重いや”と
微妙にしょっぱそうなお顔になってイエスが応じたものの、

 「…美味しいといいね。」
 「そうだね。」

ほらそこっ。(苦笑)





     ◇◇◇



さてとて、さてとて。
嵐のような夕立ちがあったとは思えぬ、それは爽やかな朝が来て。
そういえば、このお話はまだ梅雨どきなんですね。
でも確か、関東地方では本格的な降り方はしなかったような…。

 「イエス先生、ブッダさん、おはようございますvv」
 「おはよう、ちゃんvv」
 「おはようございます♪」

今朝は朝ご飯に使った食器を洗っておいでのところへお越しのさんであり。

 「あれ? もしかして着替えた?」
 「はい。さすがに3日も同じというのは…。///////」

スーパーで適当に買いましたというが、
かわいらしいロゴがプリントされたカラーTシャツと、
同系色の濃色のを選んで組み合わせたスキニーパンツが、
小柄な彼女のあどけなさには何とも可憐に映ってお似合い。
ちなみに、昨日まで着ていた一式というのは、
昨日の夕立ちで濡れたはずの服でもあるのだが。
パジャマ代わりにと、彼らのTシャツと
いつぞやブッダが100均で買ったゴムベルトのジーンズをお貸しして過ごしていただき、
部屋干しで乾いたのを着替えて帰っているので念のため。
誰が着替えさせたかを もしも突っ込まれたなら、
もとえ、さんから訊かれたならば、
タマコさんが……と言うつもりだったけれど。

 《 そういえば訊かれなかったね。》
 《 私たちへの危機感は、一切ないんだろうね。》

何せ、ブッダ様が指摘するまで、
お嬢さんをここで寝起きなんてさせられないという事情に
全く気がつかなんだほどのお人でもあり。
その折は、急な思いつきだったのだし、
どうやら世間知らずのうっかりさんでもあるらしいしと片付けていたが。

 《 私たちに危険を感じるほうが、むしろ問題なのかも知れません。》
 《 それもそうだね。》

うん、そうだね。
いろんな意味でね。( ex, 魔属性の存在である、自意識過剰である などなど )

 「うわぁ、きれいなお花ですねぇvv」

そこはやはり華やかだったからか、
さんも一番に目が留まったらしい“それ”は、
簡易キッチンの台上で、グラスに差されていた瑞々しい紅ばら数輪の姿であり。
初夏の朝ぼらけの仄明るさを、凛然とした佇まいで健気にも冴えさせておいで。
一輪一輪が立派な、それは凛々しい姿でもあり、
言っては悪いが、
六疂一間の住人には釣り合いが取れないゴージャスさであるものの、

 「もしかしてこれ…。」

もうお判りですね。(笑)

 “ええそうですよ。
  私たちもついつい夜食に食べたおむすびに入れていた、
  コーンの佃煮に盛り上がったせいで咲いたのですよ。”

 “ううう、
  パンならまだ“こっそり焼いた”と言い通せるのに。”

とはいえ、こうまで見事なバラを捨てるのも忍びないし、
奇跡から生まれた存在でも生花は生花、無下に扱うのは可哀想。
それでといつもそうしているように生けてあったものであり。
何なら管理人さんが分けてくれたとでも言いましょかという覚悟があったところ、

 「もしかして、昨日の梵天さんという人の?」
 「ははは、はい?」

思わぬお人の口からとんでもない名前が飛び出したのへ、
シッダールタせんせえが…そう来るとは思いませなんだとギョッとしておれば、

 「昨夜、まんが喫茶のほうへもお顔を出してくださって。」

雨の中倒れてしまわれたとお聞きしました大丈夫ですかと、
気遣ってくださったその上、

 「これを。」

そちらは小ぶりな大きさながら、
だがだがガーベラや霞草も添えられた、
紅ばらのブーケを手にしておいでのさんであり。

 《 こういう事態を先読みされたということでしょうか。》
 《 どうでしょうかね。》

大方、すぐにも右往左往する私たちが上手に丸め込めているものかを案じて、
これもサポートの一環で確認しに行ったのでしょうよと。
やや冷めた目になっておいでのブッダ様ですが。
お父様、やはり理解されてません。(だからそれは別のお話…。)

 それはともかく。

 「では、私の腕のほど、ご覧いただきますね。」

昨日、スーパーで揃えた材料と、
こちらのお宅にはなかろうと100均で買い揃えた、
長い延ばし棒やら、
左官さんが使いそうな取っ手に直接刃が付いているような道具を広げ。
ちょいと狭いがさほど大量に作るでなしと、
流し台脇の調理台の上で、さんによるパン作りの作業が始まる。
師匠と見込まれているイエスとしては、
やや気難しいお顔を作りつつ、すぐ傍らに立っているものの、

 《 どうしよう。それで合っているのかどうかも私には判らないよぉ。》
 《 イエス、あなたは我流でやってる特異な師匠なんですから…。》

通り一遍の方式なぞ、
嘲笑半分、鼻で笑ってもいいくらい、だというに、
のっけからこの及び腰だから話しにならぬ。
せめて聖痕が開かぬよう、
結局ブッダも一緒に立っていっての見守っておれば、

 「では。」

まずはそれぞれの分量を量り分け、
大きなボウルに強力粉を半量とイースト菌を投入。

 「私流のはドライイーストではないんで。」

確かに粉末ではなかったが、
そこのところからしてこちらにはもう意味合いが判らない。

 《 な、流しましょう。》
 《 うんうん。》

そうかそうかと頷くだけにとどめておれば、さてお次は、
食塩と砂糖を 30度くらいに温めた水で溶き、
(風味づけにスキムミルクを入れてもよし)
これを最初の小麦粉へ混ぜ入れてなじませて、
そこへ残りの強力粉を足して、いよいよ練り始めるさん。
これで水気って足りるの?と思うほどだったのが、
次にはねちゃねちゃと指へまとわりつくゆるい粘土みたいになり。
まだ早いんではなかろうかというに、
まな板より大きめのこね板へと移されて。

 「えいえい、もうちょっと。」

これがおそばだとポロポロのがなんとなくしっとりして来てまとまるが、
こちらはねちゃねちゃとしたもの、このまま上手くまとまるのかなぁ…と

  訝しむような厳しい目になりゃいいものが、

大丈夫? 失敗しても私たちは怒らないからねと言いたげな
むしろ彼らの方こそ 危なっかしいお顔を、
しかも二人揃って見せている辺りが、最聖人ならではということか。

 《 子供より孫は可愛いってホントなんだねぇ。》

つい厳しく躾けちゃう部分がずんと緩むと言うか…と、
どっかで既に言ってなかったか それというの、
ついつい繰り返しておいでのお二人の前で、

 「よしっ、何とかまとまった。」

そこはやはり、この道を目指しておりますと言うだけはあってか、
表面もするんとまとまった生地へショートニングを混ぜ入れ、
うんしょよいしょと捏ね続けるさん
…と、それを見守る師匠コンビという図だが。

 《 ううっ、何か私もやってみたいっ。》
 《 こらこら。》

大変そうだが、その一方で、
こういう作業をじかで見るのも滅多にない機会だったものだから、
うあ、なんか何か、やってみたいという
初物食い根性をくすぐられたらしい誰か様を押さえるのが
後半は大変なブッダ様だったようであり。

 《 偏屈で厳しい師匠でいなきゃダメでしょうが。》
 《 でもっ。》

こんな手間がかかるもの、私ったら浮かれた拍子にほいほいと生み出していたなんて。
という方向でも感じ入ったイエスであったらしかったが。

 『そうだね、ちなみに…君の奇跡でパンへ転変した食器たちも
  物によっては職人さんが頑張って焼いたものなんだよ?』と。

いや、言ってしまっては追い詰めることに成りかねないので、
ぐっと堪えたブッダ様であったそうで。
そんな二人の葛藤も知らず、(当たり前ですが)
表面がなめらかになって来た生地を、軽く叩いてくるんと丸めて。
洗って伏せておいたボウルへ入れると、ラップでぴったりと蓋をして。

 「一次発酵、1時間ほど待ちますね。」

ドライイーストなら40分くらいでいいのだが、
自然酵母とやらはもうちょっと時間が掛かるそうで。
にっこーと笑ったさんだったのへ、
こちらもついつい、極上の“にっこーvv”を返していては世話はない。

 《 いやいや、だって、あんな大変な作業を見てたし。》
 《 ますますのこと、こっちも苦行になって来たかも。》

そこできりりとお顔を引き締めたブッダ様だったが、

  Trrrrrrr、Trrrrrrr…と、

居室の卓袱台の上で、携帯が自己主張を始めたのへ、

 「あ、私だ。」

あらあらと慌てて素に戻るところが他愛ない。
ぱたりと開いて出てみれば、

 【 ちょっと聖さん? 今日ってクリーンデイだって忘れてない?】
 「あ…、そうでしたっ!」

あわわ、大事なことを忘れてたと、
すっきり涼やかな双眸を、ぎょっとしたそのまま見開いたブッダの耳へは、
きりりとした闊達なお声の向こうから、

 【 イエスは? ブッダも今日は来ないの?】

そりゃあ愛らしいお声が訊いておいでなのが
性能よろしく届いてもいて……。


   さて、次のおゲスト様は 誰〜れだ?(おいこら)




     ◇◇◇



ここいらは町内会の活動もいろいろとあって、
お祭りやら慰安旅行やらといった娯楽だけでなく、
溝や公園の掃除や草むしりも
一斉に手がける全体行動として月一でこなしておいで。
今日はその日であったこと、
いきなり持ち上がった騒ぎに翻弄されてたお陰様で
すっかり忘れていたこちらのお二人であり、

 「じゃあ、私たちは出掛けるけれど。」

オーブンの使い方は判るよねと、ブッダが言い置きかかったのへ、

 「私もついてっていいでしょうか。」

おやおや、意外なことを言い出すさんであり。

 《 お留守番が苦手なところも師匠似でしょうか。》
 《 ブッダ〜。》

いや、厭味じゃなくてですねと苦笑したブッダ様へ、

 「発酵待ちに1時間ありますもの、何かお手伝いしたいんです。」

にっこり微笑ったさんにしてみれば、
此処に置いてかれても、
結句 何もしないでぼんやり待つことになるだけなので、ということらしい。
それじゃあと、
まださほどの陽射しではないけれど、一応はと帽子をかぶって
手には軍手、首にはタオルという武装もOK。
集合場所である児童公園までを並んでお出掛けと相成って。

「そういえば、松田さんの姿を見ないけど。」

一昨日、さんのおばさんらしき他の住人のことを聞くのにも
電話をかけてのこととなったのは、
あのお元気な管理人さんが不在だったからであり。

 「何でも娘さんが風邪で倒れたそうだよ?」

そのあたりの話も聞いておいたブッダであったらしく。

 「看病とかお孫さんの世話とかにって、
  そっちへ泊まりがけで出掛けてらっしゃる。」

別にその隙をついたワケではないけれど、

 《 女の子が出入りしているなんてのは、意見されかねないかなぁ。》
 《 う〜ん。》

せっかく、時々騒ぐけれど感じのいい店子で通ってきたのにねと、
困ったなぁと眉間へコイルを寄せておれば、

 「あ、いえすとぶっだだvv」

到着間際だった児童公園の入り口から愛らしいお声が掛けられて。
さすがはご町内行事で、
竜二さんご一家の、静子さんと愛子ちゃんも出ておいで。

 「あら、可愛いお嬢さん。」
 「初めましてっ。私、イエスせんせ…」

あわわと慌てたイエスとブッダが二人掛かりで口元を封じ、
それは綺麗にくるんと彼らへ背中を向けてから。

 「し、ちゃんっ。」

ただでさえ不思議なニート風のおにいさんたち、
実はパン職人だなんて広まったらば、ますますとややこしく成りかねぬ。

 “ましてや、竜二さんは
  イエスをどっかの組の二代目だと思い込んでるようだっていうのに。”

なので、

 「いいですか? イエスはその腕のほども隠し通している身です。」
 「あ、はいっ。」

ちょっと無理があったかなと思ったが、
そも、工房らしいところもないアパート住まいだわ、
だのに、昨日の朝も新たに焼いたらしいパンが増えてた、
早速にも謎のお人だってところは織り込み済みだわ…だったせいか。

 「世を忍んでおいでなのですね。」

しかも、ブッダさんもどこか高貴な雰囲気がなさるお方。
もしかして、

 「特別な贔屓筋からの注文しかお作りにならぬ、
  その連絡係でおいでだとかっ。」

 「…う、う〜んとっ、」

……今時の十代の常識ってのにもいろいろあるようです。
突飛過ぎて応対に困ったようですが、どうか斜めにならないでブッダ様っ。
男二人と言えばと、腐った方向へ向かなかっただけマシですよ?(おいおい)
そんなお陰様…と言っていいものか、

 「なので、あなたは遠縁の娘さんだということで。」
 「はいっ、判りましたっ。」

イエスではなくブッダの言葉だというに、
うんうんと大きく頷いて理解してくださった模様であり。その一方で、

 「お姉さん、かわいいvv」

おうたのお姉さんみたいな把握か、
愛子ちゃんがきゃあvvとまとわりついたの、
こんにちは〜と愛想よく懐き返しているさんを見やった
静子さんの方のお眸々は…ちょっぴり鋭くて。

 “いきなりブッダさんが口を封じるように引き留めたってことは。”

あわわ、やはりなかなか鋭い女傑、
何かあるなと感づかれたようだったけれど、

 “はっ、まさか、イエスさんの許婚者?”

ナ〜イス勘違い。(ナイスか?これ)
とはいえ、あの日頃はお呑気な二人が、
それは慌てて素性を言い直させたところが
らしくないからこその決め手にもなったようで。

 「……。」

しゃがみ込んでの愛子ちゃんとお喋りという
ほのぼのとした笑顔のまんまのさんにそっと近づき、

 「大変な世界だってのに、務まるのかい?」

こそりと訊いたお姉さんは、
お声こそ鋭かったものの、
切れ長のきれいな目にはうっすらと潤みが浮いてもいて。
肩越しに振り向いたさん、

 “はっ、この人はっ。”

びびんっと、胸元を貫いた想いがあって、
ついのこととて、お顔を見合わせあってたりして。

 もしかしたらば、
 シリアスなお顔になったらば紛うことなきイケメンのイエス様や、
 ちょっと半目になると迫力が増す、
 でもでも麦ワラ帽子も妙にお似合いのブッダさんとか、
 隠し切れてないあの方々の素性に気がついておいでなのかしらっ。

 ……って、あなたもそれって どういう把握なんでしょうか、さん。

確かに、ちょっぴり気難しい、
腕の程を見せてはくださらない師匠だけれど。
それでも付いてゆくと決めたのだから、

 「いえあの、わたし頑張りますっ。」
 「そうかい。…っ、頑張りなっ。」

ブッダ様〜っ、
何か変な友情が発酵中です、ここ〜っ。
気がついて〜っ!









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 *お久し振りです…。
  どういうお話か、もうお忘れかもしれませんね。
  なんて長い1日1日でしょうか。
  でもまだ頑張るぞ!
  さんもイエスもブッダもファイトだっ!


ご感想はこちらへvv めーるふぉーむvv


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